こんにちは。隈本です。
前回の日記で、司法書士の仕事の内容として、裁判関係業務というものを挙げ、説明しました。
その中で、本人訴訟についての支援というものをご紹介しましたが、今日は、その本人訴訟についてお話したいと思います。
司法書士は、今まで本人訴訟に対して、後方支援という形で関与してきました。ところが、平成15年から司法書士法改正により、特定の司法書士には、簡裁代理権が付与され始めました。
簡裁代理権は、簡易裁判所においてのみと限定されているとはいえ、弁護士同様、訴訟代理人となることで、裁判の迅速化の立場からは歓迎され、期待されているといえます。
しかし、人によっては、自らの手で解決したいという方もいるでしょうし、司法書士に書類作成をお願いし、司法書士の援助の下で、二人三脚で解決したいという方もいるかと思います。
そこで、参考までに、簡易裁判所における以下のようなデータを示してみました。これは、裁判所のホームページにある平成20年度司法統計というものから抜粋したものです。
①簡易裁判所に提起された通常訴訟事件の総数
平成20年度 537,626件
平成19年度 461,128件
平成18年度 386,833件
平成17年度 356,718件
平成16年度 347,851件
平成15年度 337,076件
※年々増加していますが、過払い請求事件の増加によるものと思われます。
②弁護士又は司法書士を、原告又は被告の代理人として付けたものの総数
平成20年度 168,087件(31.26%)
平成19年度 133,395件(28.92%)
平成18年度 78,243件(20.22%)
平成17年度 57,883件(16.22%)
平成16年度 43,796件(12.59%)
平成15年度 30,863件( 9.16%)
③原告代理人として司法書士のみが就任している事件の総数
平成20年度 73,561件
平成19年度 58,202件
平成18年度 28,905件
平成17年度 16,747件
平成16年度 8,883件
平成15年度 1,207件
④原告代理人として弁護士のみが就任している事件の総数
平成20年度 65,101件
平成19年度 50,607件
平成18年度 28,162件
平成17年度 20,029件
平成16年度 15,064件
平成15年度 11,483件
⑤被告代理人として司法書士のみが就任している事件の総数
平成20年度 2,852件
平成19年度 2,030件
平成18年度 1,439件
平成17年度 1,373件
平成16年度 1,200件
平成15年度 238件
⑥被告代理人として弁護士のみが就任している事件の総数
平成20年度 14,311件
平成19年度 11,587件
平成18年度 10,850件
平成17年度 12,760件
平成16年度 13,561件
平成15年度 14,180件
[参考] 簡易裁判所の審理期間(平成20年度)
1か月以内 61,359件(11.41%)
2か月以内 248,230件(46.17%)
3か月以内 128,426件(23.89%)
6か月以内 83,107件(15.46%)
1年以内 14,895件(2.77%)
2年以内 1,537件(0.29%)
3年以内 62件(0.01%)
4年以内 10件(0.00001%)
以上から分かることは、平成20年度では、簡易裁判所において、原告又は被告が、『本人訴訟』をした裁判事件の件数は、369,539件であり、これは全体の68.74% を占めるということです。
もちろん、経済的理由により、頼みたくても頼めなかったという訳があったのかもしれませんが、本人訴訟というのは、皆さんの予想以上に、件数が多いという印象を持たれたのではないでしょうか?
(なお、この件数に対してどれだけの司法書士が、後方支援をしているかは分かりません。)
ちなみに、本人訴訟(司法書士に書類作成を依頼する場合)のメリットとして、以下のようなことが考えられます。
① 一番のメリットとして、訴訟費用が安くてすむ。費用は、司法書士への書類作成のみ
であり、成功報酬等も発生しない。
② 本人が、訴訟を通じて、訴訟法や実体法、訴訟制度について認識を深めることが
できる。
③ 本人訴訟をする本人自身が、法的立場を十分に理解できるし、裁判の進行や
その状況を直接得ることができるので、勝敗の結果を問わず裁判の結果について
納得できることが多い。
④ 紛争が回り道にならず、紛争の個性にあった解決が得られやすい。訴訟代理人
関与の場合、攻撃防御の法律論の展開で、本人の意思から離れたところで攻防が
展開されやすいが、本人関与なら落ち着くべき解決先を予見しているから、攻防に
おいて道草をせず、早い段階で解決することができる。
もちろん、一方で、訴訟代理人に依頼すると、一番のメリットとして、いろいろな手間が省けます。裁判にも出席しなくていいですし、必要な書類も全て作ってくれることになります。
つまり、結局のところ、お金を払って、その代わりに、手間を省くということですよね。
私も、正直なところ、こちらがいいですよ!と断言することはできません。しかし、最初から、これしかないと決めつけず、事件の背景や複雑さ、経済性等を総合的に考慮して、選択していかれるのがいいんじゃないのかなぁ、と思っております。
もし、このようなことで迷っている方がいらっしゃれば、お近くの司法書士に相談してみたらどうでしょうか。
きっと、ご本人に合った選択肢(訴額140万円超の場合は書類作成のみ)が見つかるかと思います。
もちろん、私も、随時ご相談を受け付けておりますので、何かありましたらお気軽に連絡ください。
最後は、ちょっとPRぽくなってしまいましたが、それでは、今日の日記はこれで失礼いたします。
'09.9.16(Wed.)