こんにちは。隈本です。
  ここ1週間ほど、急にばたばたしており、更新、かなりサボってました。すみません。
  お客様からの問合せで、よく聞かれることがあります。
  それは、
  「司法書士の報酬(料金)は、どこの事務所でも一緒なんですよね?」
 ということです。
  実は、かつては、報酬が一律でした。
  どこの事務所にいっても、上限下限の範囲でのばらつきはありましたが、ほぼ同一料金でした。
  「かつては」ということは、現在は、違うということですね。
  といいますのも、司法書士がお客様から受ける報酬については、公正な競争の確保や合理性の観点から、平成15年4月1日に司法書士の報酬に関する規定(平成10年7月1日施行)が司法書士会会則記載事項から削除されました。
  これは、平成13年3月の閣議決定の規制改革推進3か年計画で、資格者間における競争を活性化する観点から、資格者における大臣認可による報酬基準を削除するとされたことによるものです。
  ですから、この削除(平成15年4月1日施行)により司法書士報酬は完全に自由化されたわけです。
  結局は、規制緩和の流れによるものといったところでしょうか。
  ということなので、上記の報酬に関する規定は、現在では、使われておりませんので、お客様と司法書士が対等な立場で合意した額によることになりました。お客様と司法書士は、個々に報酬に関して契約することができるわけです。
  ですので、司法書士が業務を行ったときに受ける報酬については、各司法書士(各事務所)が自由に定めることになっています。
  ですから、当然のことながら、各事務所によって料金が異なってくるわけです。
  ただ、自由といっても、会則では、司法書士の報酬は、その額や算定方法・諸費用を明示し、依頼者との合意によって決定することになっています。
  これは、自由化によりお客様が不利益を被らないように、「司法書士は、あらかじめ依頼ををしようとする者に対し報酬額の算定の方法その他報酬の基準を示さなければならない」(司法書士法 規則22条)とされています。また報酬の明示ということで、報酬の金額又は算定方法を事務所の見易い場所に掲示するするなどして明らかにし、受任に際しては報酬について十分説明しなければならないとされています(司法書士会会則基準89条、司法書士倫理20条)。 
  【参考】
 司法書士法施行規則第22条(報酬の基準を明示する義務)
  司法書士は、法第三条第一項各号に掲げる事務を受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない。
 司法書士会会則基準第89条(報酬の明示)
  会員は、依頼者に対し、その報酬の金額又は算定方法を事務所の見易い場所に掲示するなどして明らかにしなければならない。 
 司法書士倫理第20条(報酬の明示)
  司法書士は、事件の受任に際して、依頼者に対し、その報酬及び費用の金額又は算定方法を明示し、かつ、十分に説明しなければならない。
  さて、自由化といっても、ある程度の目安はどうなっているのか気になりますよね。
  実は、司法書士会連合会で、司法書士の基本的な業務について具体的なケースを想定して依頼を受けたときの報酬額(回答した司法書士の過去の実績に基づいた報酬)について、司法書士会会員を対象としてアンケート調査を実施しており、その結果を公開しています。
http://www.shiho-shoshi.or.jp/about_shiho_shoshi/remuneration/index.html
 アンケートの実施方法と結果
  対   象・・・全国より無作為抽出した2,742名の司法書士会員
  回収方法・・・無記名による郵送回答
  実施時期・・・平成20年1月
  回 収 数・・・1,173通
  アンケート結果一覧表は、全国を8ブロックに区分し、回答のうち低額者10%の平均額、高額者10%の平均額、全回答者の平均額をそれぞれ公開しています。 
   以下、九州地区の一部抜粋です。
 【所有権移転】
  Aさん(買主)はBさん(売主)の所有する1戸建て(土地1筆と建物1棟)を購入することにした。この土地・建物の評価額は1,000万円であり、売買を証する書面(登記原因証明情報)を作成し、所有権移転登記に必要な登記識別情報(または登記済証)の提供を受けた場合。(銀行での立会がない)
 〔有効回答数:1,108〕 
         低額者10%の平均  全体の平均値  高額者10%の平均
  九州地区    22,355円       40,974円      70,727円 
 【抵当権抹消】
  AさんはB会社から住宅ローンの融資を受けて、その担保として、Aさんの所有する1戸建て(土地1筆と建物1棟)にB会社の抵当権設定登記がなされている。今般借入金を完済したので抵当権抹消の登記をしたい。その際、抵当権抹消登記に必要な登記識別情報(または登記済証)の提供を受けたが、弁済証書(登記原因証明情報)がないので司法書士が作成した場合。
 〔有効回答数:1,122〕 
         低額者10%の平均  全体の平均値  高額者10%の平均
  九州地区      8,230円       13,270円       23,928円
 【会社設立】
  発起人であるAさんとBさんの2名が500万円を出資し、株式会社を設立することにした。定款や議事録、証明書等のすべての書類の作成と設立登記申請をした場合。
 〔有効回答数:955〕 
         低額者10%の平均  全体の平均値  高額者10%の平均
  九州地区     42,104円      101,051円      204,600円
  
  どうですか?
  少しは参考になったでしょうか?
  ただ、上記以外に、別途、取引立会い報酬、日当、交通費等が発生することがありますので、あくまでも目安とお考えください。
  なお、注意して頂きたいのが、高いから質がいい、安いから質が悪いというわけではありません。
  中には、安かろう悪かろうのパターンがあるのも事実だと思います。更に、高くて悪いといった最悪のケースがあるかもしれません。
  また、司法書士との相性もあるでしょう。これも結構大事ですよね。
  どうしても気になるようでしたら、いくつかの事務所に、電話で問合せしてみてもいいのではないでしょうか。 
  さて、他の事務所でもそうでしょうが、私の場合、最初の電話等での問合せがあった際、料金(報酬)は幾らぐらいでしょうか?と聞かれることがよくあります。
  そして、料金についての説明を電話口でした後、特に料金を気にされるお客様の場合には、料金が各事務所で違うことをお話をして、
 「他の事務所へも問合せしてみて、料金を比較検討されてもいいんじゃないでしょうか?もしかすると、うちより安いところがあるかもしれませんよ。」
 と答えることにしています。
  商売気がないといえばそれまでですが、お客様自身が当事務所の料金に納得して、ご依頼をしていただきたいと思っているからです。
  もちろん、他の事務所の料金が安ければそちらの方にご依頼されることになるかもしれませんが、私としては、料金はなるだけ安くしたいのですが、一定以上のサービスを保ちながら取り組んでいくためには、どうしても安さ勝負では限界がありますので、ある程度の料金にはなってしまいます。(それでも、自分なりには安くはしているつもりです。)
  ですから、私の場合、
 「これだけのサービス・満足度に対してなら、この料金だったら安いよね。」
 と言っていただけるような方針で取り組んでいます。
  さて、このような報酬(料金)の自由化ですが、司法書士業界のサービス業としての活性化は図れたのでしょうが、反面、司法書士として成功するには充分な知識や正確に仕事をこなす能力だけではなく、経営者としての手腕も問われることになりそうです。 
  私はサービス業としての自覚は全く問題ないのですが、どうやら今のところ、経営者としては、まだまだ未熟者なのかもしれません・・・
  それでは、今日の日記は、これで失礼いたします。
 '09.11.18(Wed.) 

 
  
 